今に残る下町の人情、大阪市西成区の「西天下茶屋」で知る人の温かさ

昭和の時代にあり、平成に入ってなくなったもの、消えつつあるものは何でしょうか。演歌、3輪トラックなどいろいろと思いつきますが、下町の人情もその1つでしょう。

大阪市の南部、西成区には下町の人情が今に残る地域があります、南海電鉄汐見橋線の西天下茶屋駅周辺です。30分に1本ワンマン電車が走る駅前に昭和を思わせる古い商店街があります。

西天下茶屋駅周辺にある「銀座伊商店街」は食べ物が安い

NHKの連続テレビ小説「ふたりっ子」の舞台にもなった通称銀座商店街です。古いアーケードの中に物販店や飲食店が並んでいますが、とにかく食べ物の値段が安いのに驚かされます。

カレーライスやお好み焼きは250円。価格は昭和の時代からストップしています。商店街には若い世代にとってちょっと暑苦しく感じるお節介なおばちゃんたちがたくさん買い物をしています。

お金をなくして迷い込んだネパール人のバックパッカーに同情してごちそうをもてなしたり、近所で祝い事があるからといって商売そっちのけで赤飯を炊いたりする逸話は山ほど聞こえてきます。

傍目にはどこにでもありそうな雰囲気の商店街ですが、何とも不思議な場所です。この辺りは戦災を免れたため、商店街の周囲を狭い路地が通り、古い文化住宅が建ち並んでいます。

 

銀座商店街は人情あふれる街

木造2階建てで、1階が4部屋なら2階も4部屋の造り。6畳と4畳半の間取りにキッチンとトイレがついた昔ながらの住宅です。商店街で出会うお節介だけど、とても優しいおばちゃんたちの多くが文化住宅に暮らしています。

人情の原点もこの文化住宅にあるのです。この地域の人たちは他人に対して敷居が低い大阪人の気質そのまま。おすそ分けなど当たり前で、独り暮らしの高齢者がいれば勝手に見守りしてくれます。

近所の祝い事には柿の葉寿司担当、赤飯担当などと役割分担を決め、差し入れ合っています。余計なことを言ってうるさいこともありますが、悪気は少しもありません。

 

「男はつらいよ」で描かれた人情が西天下茶屋駅周辺にある

ちょうど昭和の名作映画「男はつらいよ」で描かれた下町の人情が、この辺りに残っているのです。といっても「男はつらいよ」は、原作者でもある大阪出身の山田洋二監督が大阪下町の人情を基に描いたもので、公開当時から「東京の下町はもっとドライな人間関係だ」などと映画評論家が批評していました。

それはともかく、アパートやマンション街ならこうした濃密な人間関係がこのご時世に残ることはなかったでしょう。

大都会にいて見知らぬ人の温かさに触れられる場所です。おばちゃんたちも高齢化が進んでいますが、団塊の世代が元気なうちはこの地域から人情話が聞こえてくるはずです。